コラム

2026.08.05

コネクター製造における課題解決の鍵は「X線CT」

目次

― VGSTUDIO MAXでどこまで見えるのか

コネクターは、自動車、産業機器、OA機器、家電、通信機器など、あらゆる電気・電子製品の接続を担う基幹部品です。電動モビリティの拡大やデータセンター、電子機器の高機能化に伴い、コネクターに求められる小型化・高密度化・高信頼性の要求は年々高まっています。世界各国の主要メーカーが開発競争を繰り広げる中、コネクター市場そのものは今後も拡大が見込まれる分野です。
 
一方で、コネクターの多くを占める射出成形部品には、ヒケ、肉厚の偏り、ボイド(空隙)、ゲート位置に起因する強度不足など、成形特有の品質課題がつきまといます。こうした課題に対応し、開発から量産までの各段階で高い品質と信頼性を確保するためには、内部構造まで踏み込んだ適切な検査と評価が欠かせません。本記事では、コネクター製造の現場でよく挙げられる困りごとを整理した上で、当社のX線CT解析ソフトウェア「VGSTUDIO MAX」が、これらの課題にどうアプローチできるのかを紹介します。

コネクター製造が抱える検査上の課題


射出成形は複雑形状への対応力や量産性、寸法精度の高さに優れる一方、金型が高価であるため、量産開始後の設計変更や金型修正は極力避けたいというのが製造における共通認識です。
 
こうした前提のもとで、品質保証・検査の現場では、主に次のような課題が挙げられます。
 

  • ボイド(空隙)の位置・大きさ・分布を定量的に把握したい
  • 肉厚が設計通りに成形できているかを確認したい
  • 製品内部の寸法や、組付け部品の勘合具合を数値で把握したい
  • 既存の測定機ではアプローチできない箇所を確認したい
  • 金型の修正・補修を適切なタイミングで実施したい
  • 新製品における金型修正の期間を短縮したい

 
これらの課題に共通しているのは、寸法、外形だけでなく内部情報にも注目する必要があるという点です。 従来、内部の状態を確認するには、サンプルを切断・研磨して断面を観察する方法や、三次元測定機でプローブが届く範囲のみを計測する方法に頼らざるを得ませんでした。しかし、切断すればそのサンプルは再利用できず、三次元測定機ではそもそも計測できない箇所も少なくありません。結果として、サンプルの抜き取り検査に依存せざるを得ず、内部の欠陥を見逃すリスクや、金型修正のたびに多くの時間とコストを要する状況が続いてきました。

なぜ射出成形品には不具合が生じるのか


コネクターハウジングに代表される射出成形品の不具合は、成形条件・金型設計・製品形状という複数の要因が絡み合って発生することが、幅広く指摘されています。例えば、樹脂の充填が不十分な状態で保圧が切り替わると、肉厚が集中した箇所を中心にヒケや内部のボイド (空隙)が生じやすくなります。また、金型内の空気がうまく排出されずに圧縮されると、樹脂が焼け焦げたような跡(いわゆるディーゼル効果)が内部に残ることもあります。さらに、冷却の不均一さや肉厚差、繊維配向の乱れは、脱型後の反り・変形(ヒケ・そり)の原因になるとされています。
 
こうした不具合は、成形条件(射出速度、保圧、金型温度、冷却時間など)や金型設計(ゲート位置、肉厚設計、排気構造など)を見直すことで低減できますが、そもそも「今、どこに、どの不具合が、どの程度発生しているか」を正確に把握できなければ、どの条件を調整すべきかの判断も難しくなります。ここに、内部を非破壊で定量的に確認できる検査技術の重要性があります。

X線CTとVGSTUDIO MAXが果たす役割


X線CT(コンピュータ断層撮影)は、対象物をあらゆる方向からX線で透過撮影し、内部・外部を含めた形状を非破壊のまま3Dデータとして再構成する技術です。VGSTUDIO MAXは、このCTデータを可視化するだけでなく、様々な専門的解析機能を通じて、計測・検査・解析を定量的に実行できるソフトウェアです。切断せずに内部を確認できるため、同一サンプルを繰り返し様々な条件で検査でき、抜き取り検査から全数検査への展開も視野に入れられる点が大きな特徴です。
 
以下では、先に挙げた課題ごとに、対応するVGSTUDIO MAXのモジュールと、そこから得られる効果を整理します。

ボイドの位置・大きさ・分布の定量化

ボイドの有無は目視や外観検査でも確認できますが、内部のどこに、どれくらいの大きさで、いくつ存在するかまでは従来把握が困難でした。欠陥/介在物解析機能を用いると、CTデータからボイドを自動検出し、発生位置(XYZ座標、表面からの距離)、体積、投影面積、球形度・稠密度といった形状の特徴を数値化できます。
 
球形度・稠密度からは、巻き込みボイドか引けボイドかといった発生要因の推定も可能です。一般に、引けによるボイドは保圧不足や肉厚の集中箇所で、巻き込みによるボイドは金型内の空気の排出不良やスクリュー計量時のエア混入で発生しやすいとされており、こうした知見と照らし合わせることで、射出圧力・射出速度・金型温度・離型剤の配合といった製造条件へのフィードバックにつなげられます。表面からの距離が把握できれば、後加工によって表面にボイドが露出するリスクや耐久性の考察も事前に勘案または検討できます。

肉厚の定量的な把握

肉厚は製品強度に直結する要素ですが、既存の測定設備では計測できない箇所も多く存在します。肉厚が急激に変化する箇所(リブの付け根や壁厚の段差など)は、ヒケや反り・変形の起点になりやすいことが知られており、肉厚分布を面全体で把握できるかどうかは、こうした不具合の予防に直結します。肉厚解析機能では、製品全体を対象に薄肉・厚肉・偏肉の分布を可視化でき、製品ではなく空間側を対象に解析することで、隙間の計測にも応用できます。欠陥解析機能と組み合わせれば、内部のボイド (空隙)も勘案した上で肉厚を総合的に評価することも可能です。

内部寸法・組付け状態の把握

コネクターのピン挿入部やハウジングの勘合部は、内部の狭い空間に厳しい寸法公差が集中しており、従来の測定機ではプローブが物理的に届かない箇所が少なくありません。座標計測機能を用いれば、CTデータ上に幾何要素を作成し、寸法公差・幾何公差を内部の狭小部を含めて評価できます。同一ロットの複数個体を一括でスキャン・計測することで、ロットやキャビティ間でのばらつき把握にも活用できます。

全体形状の把握と金型修正への活用

成形品がCADの設計値からどの程度ズレているかを把握することは、金型の修正タイミングを判断する上で重要です。従来は、三次元測定機で取得した点群情報をExcelやプレゼンテーション資料に書き出し、金型設計者に人手で伝達するという運用が一般的でした。この過程では、点情報を人が読み替えて入力する作業に起因する誤りや、限られた点数から面を作成することによる精度低下が生じやすいことが指摘されています。
 
設計値/実測値比較機能では、CTスキャンデータとCADデータを重ね合わせ、形状の偏差を3Dのカラーマップとして可視化できます。ジオメトリ補正機能と組み合わせれば、実測との偏差量をSTEPファイルでのCADサーフェスデータや多点情報として直接出力し、金型CADの修正作業に活用することも可能です。人手による点情報の変換工程を減らすことで、修正精度の向上と、修正にかかる期間短縮の両方が期待できます。

検査工数への効果

実際の射出成形部品を対象とした初品検査の事例では、切断・研磨・アライメント・計測・レポート作成という従来の手順で、1個体・684箇所の特徴計測に約75時間を要していました。CTスキャンデータとVGSTUDIO MAXによる計測に切り替えたところ、同じ箇所の検査プロセスが約16時間で完了し、工数は約8割削減されました。切断が不要になったことと計測の効率化により、初品検査全体のリードタイム短縮、さらには最適な金型修正を通じて、量産立ち上げまでの期間がおよそ半減した事例も報告されています。

設計・シミュレーションとの連携という副次的効果


CTによる計測は、検査工程だけでなく、設計・シミュレーション工程とも連携させることができます。ある大手コネクターメーカーの事例では、CAD設計段階で定義した品質基準(PMI: 製品製造情報)を、成形シミュレーションによる仮想的な最適化と、CTによる実測検査の両方で共通利用できるようにする取り組みが行われました。
 
従来は、シミュレーション用と検査用とで品質基準を別々に定義する必要があり、二重の工数が発生していましたが、これを一本化したことで、手戻りの削減とライトファーストタイム率の向上、それに伴う開発スピードの向上につながっています。設計・シミュレーション・検査を同じ品質基準でつなぐことは、CTデータを軸にしたデジタル化がもたらす価値の一つといえます。

まとめ

コネクター製造における品質保証上の課題の多くは、製品「内部」の状態を、壊さずに、かつ定量的に把握することが困難である点に起因しています。X線CTとVGSTUDIO MAXを組み合わせることで、ボイドの分布、肉厚、内部寸法、金型との偏差といった情報を非破壊のまま数値化・可視化でき、検査工数の削減や金型修正期間の短縮、さらには全数検査への発展にもつなげられる可能性があります。
 
2026年10月26日(月)〜31日(土)、東京ビッグサイトで開催される「JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)」では、デモや、実データを用いた個別相談の機会を予定しています。自社製品の内部がCTでどこまで見えるのか関心をお持ちの方は、ぜひ会場にてご確認ください。

SHARE

Featured Product

注目製品

Featured Articles

注目記事