2026.03.19

バッテリーは電動モビリティやポータブルデバイス、データセンターなど幅広い分野で利用が進み、今後も需要の拡大が見込まれています。一方で、主流であるリチウムイオンバッテリーは、製造技術が確立しているものの、材料のばらつきや安全性、製造コストなど、性能と品質にかかわる課題を抱えています。 こうした課題に対応し、開発から製造までの各段階でより高い性能と信頼性を確保するためには、適切な検査と評価が欠かせません。本章では、バッテリー製造に求められる検査の役割と背景を整理します。
目次

バッテリー製造は、開発、試作、製造、出荷、二次利用といったプロセスで構成されています。研究開発を行い試作による品質チェックを経た上で製造に入り、出荷されます。製造の各段階で集まった情報を解析し、フィードバックをしながらより良い製品づくりに取り組んでいます。モビリティ用途のバッテリーは、容量が70%を切るなど劣化した場合に、モビリティほどの性能を求められない家庭用蓄電池やデータセンターのバッテリーに二次利用される場合もあります。
製造のプロセスに共通している主な課題は、性能が高く、低コストの製品が求められていること。あわせて、安全性を担保することです。リチウムイオンバッテリーは製造手法が確立されていて、通常の製品として使う上では安全性に問題はありません。一方で、内部の物質が空気に触れることによって、発火や爆発が起きるリスクがあります。
バッテリー事故は外部からの衝撃や誤使用によって起こる場合もありますが、製品内部の欠陥が原因となるケースも指摘されています。しかし、バッテリーは分解して内部を容易に確認できないため、製造や二次利用の場面では、内部状態を正確に評価する技術の確立が最優先課題となっています。
モビリティの場合、航続距離を伸ばすためには、モーターの性能向上とともに、バッテリーの性能も向上することが必要です。製造の現場が抱えている主な課題を挙げてみましょう。材料開発では、正極材などで使用される素材をコストパフォーマンスを考慮して、材料として使用できるかを選定することが重要です。負極表面のコーティング技術や、電解液の添加剤の選定も、バッテリーの安定性を左右します。
開発と試作のプロセスでは、バッテリーの性能向上を図るための課題が山積しています。セパレータの開発もその一つです。リチウムイオンバッテリーは正極と負極が直接触れると短絡(ショート)するため、接触を防いでイオンだけを通すセパレータは、バッテリーの性能と安全性にとっては重要な部材です。バッテリー使用時は高温になるため、高耐熱な材料を選択するとともに、薄膜化や強度化を図ることで安全性を確保します。
バッテリーの開発では、材料を選定しながら材料に合った形で技術を開発していて、双方を最適化するには難易度も高くなります。電気的な特性を調べるのはもちろん、それぞれの工程で材料の形状や性質、部構造などを検査する必要があります。リチウムイオンバッテリーなどの充電式電池では、10年以上の長期使用を実現するために、充電時に負極表面で金属リチウムが析出し、デンドライト(針状結晶)として成長する現象への対策が欠かせません。

製造のプロセスにおいても、クリアしなければならない課題は数多く挙げられます。主なものに電極をコーティングする塗工の厚みの管理や、微小な金属製異物などの混入、セパレータから電極がはみ出すなどの電極の位置ずれ防止などがあります。バッテリーの組み立て後も不良品を防ぐために、電解液の濡れ状態や、ガスの発生の有無、モジュール化やパック化した際の溶接や接続の状態の確認も必須です。
使用済みとなったバッテリーの二次利用も、製造したメーカーに対応が求められます。二次利用の方法の一つが、そのままの形で再利用することです。前述したように、劣化したモビリティ用のバッテリーを、家庭用蓄電池やデータセンターのバッテリーに利用するのも再利用の手法です。
もう一つは再資源化です。充電池としての性能が保たれるスレッショルド(閾値)を超えてしまい、役割を終えたバッテリーには、再資源化できる要素が含まれています。代表的なものが、希少金属のレアメタルや、レアアースです。レアメタルとレアアースは様々な製品に使用されていることから、バッテリーから取り出して再資源化します。再利用も再資源化もできない場合は廃棄になります。
しかし、再利用や再資源化をしようにも、構造の確認や材料の特定、それに状態の確認ができなければ、材料も性能も異なる製品が無数にある中で、適切に対応するのは難しくなっています。このように、開発・試作から製造、二次利用に至るまでの課題を解決するには、材料や製品の外観とともに、内部構造を確認する検査が必要です。中でも有効な方法が、非破壊による検査です。

最近はモバイルバッテリーが発火するなどの事故が、世界各地で相次いでいます。リチウムイオンバッテリーが発火する主な理由は、過充電や内部ショート、高温状態、落下などによる破損が原因で内部の温度が急上昇し、バッテリー内の成分が分解して可燃性ガスが発生するためです。
また、電気自動車やハイブリッド車、電動バイクなどに使用されているのは、より高性能なリチウムイオンバッテリーです。電動モビリティはバッテリーを載せて、かつ、人が乗って移動することから、安全性の確保は絶対条件です。ただ、初期の電動モビリティでは、バッテリーから発火する事故が多かったのも事実です。当時は技術的なノウハウが蓄積されていない段階だったために、品質に問題があった可能性が高いと考えられます。
モバイルバッテリーや電動モビリティの事故は、誤使用によるものだけではありません。内部の欠陥が原因となるケースもあり、その背景には製造工程で十分な検査が行われず、不具合が検出されていないという課題があります。
バッテリー製造で肝となるのは検査です。開発や製造において高い性能と品質を目指すことは当然ながら、工程ごとにしっかりした検査ができなければ、次の工程に入ることは難しくなります。同じ製品が複数発火すればリコールにつながり、メーカーには何十万台もの製品を回収して交換するコスト負担と信用棄損が生じます。
分解や破壊ができないリチウムイオンバッテリーに対して、高精度の検査を実現するのが、X線CTによる非破壊検査です。導入することで、材料や内部構造などの品質と性能を検知できます。さらに、検査だけではなく、リバースエンジニアリングや劣化メカニズム等の現象把握と解析に寄与する知見も得られます。次回は、バッテリー製造の課題を解決する
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