導入事例

2025.12.25

省力化に貢献するダイナミックセル生産と自動測定技術

はじめに

顧客ニーズの多様化に伴い、製造業では多品種少量生産が主流となっています。こうした背景から、大型ラインによる生産方式から、多品種対応が可能なセル生産方式への移行が進んでいます。

 

さらに近年では、自動化技術や通信技術の発展により、ライン生産とセル生産のそれぞれの利点を融合した「ダイナミックセル生産」と呼ばれる柔軟な生産方式が広がりつつあります。

 

ダイナミックセル生産の実現には、製造業向けのIoT技術「IIoT (Industrial Internet of Things)」や、機械間通信によるデータ交換を可能にする「M2M(Machine to Machine)」といった要素が欠かせません。本記事では、自動測定技術の観点から、これらの技術がどのように生産性向上・品質向上・ムダ削減に貢献できるかを紹介します。

 

自動測定セル導入による効率化事例

ダイナミックセル


 

技術的な解説に入る前に、イタリアの半島付け根部に位置する都市ノヴェッラーラに工場を持つ 3B FLUID POWER という企業を紹介します。3B FLUID POWERは当初、空力部品の加工業者として設立され、20周年を迎える今年に至るまで徐々に顧客となる対象業種を広げてきました。
 

現在では農機・航空機・自動車業界などに向けて、鋳物やアルミニウムなどの油圧式制御ユニットや、プラスチックのオイルフィルターなども手掛けています。3B FLUID POWERは、事業拡大と共に新しい技術に積極投資を行うことで生産工程の最適化を図り、核となる技術を幅広い業種に展開することに成功しています。

 

また、ISO 9001(品質マネジメントシステム)認証企業でもあります。このように紹介すると大手企業を想像されるかもしれませんが、3B FLUID POWERの建屋面積は約平米で従業員規模は数十名と、日本の大部分を占める中小規模であり、いわば多くにとって適用可能な等身大の事例といえます。

 

3B FLUID POWERの取り組みの中で、本記事では加工から測定までを一貫して行う自動生産セルについて紹介します。

 

加工部品例


 

3B FLUID POWER は、各種部品の量産において生産能力を高めると同時に、顧客からの常に高まる品質要求に応えるため、マシニングセンタによる加工工程中に三次元測定機を統合することにより、手待ち・動作・運搬などのムダを削減するシステム構想を描きました。このために必要となるのは、製造環境で適切に動作する三次元測定機という条件は当然ながら、自動化される工程への統合の容易さと柔軟性です。これらは従来のFAという枠を超えた、前述の(機械間通信)なしでは実現することは困難です。

 

この自動生産セルでは、多関節ロボットを活用してマシニングセンタや三次元測定機上でのワークの段取り替えを自動的に行い、測定結果に応じて分別するまでの一連の動作を自動化しています。オペレータは品質の傾向を把握し、技術を生かしてマシニングセンタや工具などの調整を実施しています。

 
3B FLUID POWERでは当初、生産数量の10%を抜き取ることで品質管理を行っていましたが、1台の三次元測定機を工程内に組み込むことにより、サイクル時間を犠牲にすることなく50%まで高めることに成功しています。

 

日本国内のユーザでは、自動車部品の自動検査ラインにおいて必要なサイクルタイムを確保するため、複数台の三次元測定機をラインに組み込むことで他の検査工程とのバランスを保ち、全数測定を達成している事例もあります。

 

製造現場に適した三次元測定機

製造業向け三次元測定機 「TIGO SF」


 

3B FLUID POWER が各社製品を含めて検討を重ねた結果、選択した三次元測定機はHexagonの「TIGO SF」でした。当社は製造現場向けに、幅広い三次元測定機の機種を展開しています。

 

TIGO SF は片持ち構造により、前面および左右の三面からのワークの搬入出に対応し、多関節ロボットによる段取り替えのみでなく、スカラロボットやリニアコンベアなどの動きのむだが少ない機構を統合しやすくしています。測定範囲においては、設置面積を最小限に抑えながらも ”500 x 580 x 500mm” としています。

 

また、現場での三次元測定機の状態の認識性を高めるため、容易に設定が可能なメッセージライトを搭載します。また、工作機械付近に設置する環境を考慮して、幅広い動作温度範囲に対応し、粉塵から保護するベローカバーや振動を遮断するパッシブダンパーを標準で搭載しています。さらにオプション、でアクティブダンパーや IP54 保護等級にも対応可能で、測定機全体を覆うボックスカバーも提供しています。

 

さらに、測定はタッチプローブとスキャンニングプローブに対応し、当社の 5° 刻みのインデックスヘッドも搭載可能です。Fly2 モードというプローブ軌跡の最適化機能とあわせ、測定にかかる時間を極限まで短縮できます。

 

自動測定パッケージ「TEMPO」


 

また、「TIGO SF」 はエアーレスの機種で、アイドリング時には自動的に電力消費を抑えるエコモードを備えることで省エネルギーを実現しています。

測定の自動化という分野においては、「TIGO SF」 などの当社測定機に、ワークのストッカと段取り替え用の協働ロボットおよび専用ソフトウェアを組み合わせた、「TEMPO」というパッケージ製品を提供していますが、Hexagon独自の技術により、さまざまな全自動測定・統合への要求に応える拡張性も備えています。

 

システムインテグレーションを柔軟にするM2M技術

IO Flow Manager-Designer


 

Hexagonの三次元測定機は、PULSE という振動・温度・湿度などの外部センサー群の製品とあわせて利用可能であり、後述するモニタリングシステムにより遠隔からでも状態を確認できるため、無人稼働時の信頼性を高めています。そして、当社製品に限らず、各社 FA 機器等が混在する自動化ラインやセルへの容易な統合を可能にするため、「IO Flow Manager」というハードウェアとソフトウェアから構成される製品を開発し、三次元測定機とあわせて提供しています。

 

「IO Flow Manager」 のハードウェア部分は、三次元測定機の制御機情報を外部に取り出すためのインタフェース基盤と IO Box という三次元測定機本体に取り付け可能な制御盤から構成されています。IO Box は、 IO とフィールドネットワークのインタフェースを搭載し、自動制御側との直接通信を可能としています。これにより、例えば測定機が安全な原点位置にあって測定可能な状態であることや、測定中もしくは測定完了、測定結果判定や何らかの異常発生などの状態を自動制御側にフィードバックできます。

 

IO Flow Manager のソフトウェア部分は主に、「Designer」、 「Executor」 、「Configurator」 という 3 つのアプリケーションから構成されています。

 

このうち 「Designer」 は、制御側からの入出力信号を含め、測定開始から結果出力までの一連の自動制御を定義するアプリケーションであり、 Windows のグラフィカルなユーザインタフェースで工程を定義できます。これにより、 PLC の専門知識は不要となり、かつ Windows 上のソフトウェアであるが故に、一般的な PLC では処理が困難であるサーバ等とのネットワークを介した通信、例えばワークの詳細情報の受信や測定結果データ送信といったファイル交換、外部プログラムの起動や終了待機などの機能も容易に実装でき、バーコードリーダや RFID などの外部入力も統合可能となります。

 

このため、当社の専門員による構築後も、トレーニングを受けることでユーザにおいても将来的な変更や拡張に柔軟に対応可能となるため、従来の FA 分野の枠を超えた無限の可能性を持続的に実現できます。

 

IO Flow Manager-Executor


 

また、 「Executor」 は三次元測定機のコンピュータ上で実行する、自動工程の実行とユーザインタフェースとなるアプリケーションです。オペレータにより段取り替えを実施する半自動セルの場合は、バーコードリーダなどとあわせた測定ワークの選択画面や測定レポートなどを表示し、全自動の構成の場合は、通信状態などを表示することができます。

 

「Configurator」 は、測定プログラムやオペレータリストなどの適時更新されるデータを設定するためのアプリケーションです。簡単な設定画面で、制御体系を変更することなく必要に応じた更新が可能となります。例えば、新規の測定品が発生した時の手順として、測定ソフトウェア 「PC-DMIS」 上で 3D CAD モデルを読み込むことで測定計画から測定プログラムを短時間で作成でき、 PMI 情報が付加されていれば、より効率よく作業を行うことができます。また「PC-DMIS」 上では、オフラインでプログラミングからシミュレーションまで実施することができるため、実機上では作成したプログラムの最終確認と「Configurator」 への登録という簡単な作業のみで、新しい生産品の測定に対応可能となります。これにより、機械の停止時間というムダを排除し、効率の最大化につなげることができます。

 

このように構築されたシステムにおいては、手待ちや動作・運搬といったムダを排除できるだけでなく、効率の良い確かな測定による加工のムダの削減、ダイナミックセルの利点である「必要なモノを必要なだけ加工する」といった、造りすぎや在庫のムダの削減にもつながります。>当社では、工作機械の工具マガジン内に搭載可能で、バイスにワークを取り付けたままの状態で測定可能な接触式プローブ、レーザスキャナ、ポケット底面の厚みなどを測定する超音波厚み測定プローブ、温度測定プローブなどの豊富なラインナップがあり、加工開始前の正確なワーク座標設定から加工途中の測定といった品質管理工程を取り入れることで、不良・手直しのムダを削減できます。

 

IIoTによる情報共有と品質分析

HxGN | SFx Asset Management


 

IIoT 技術を活用することで、データを活用し、さらなる生産効率や品質の向上につなげることができます。

 

「Q-DAS」という品質管理に特化した統計解析ソフトウェアプラットフォームは、リアルタイムでさまざまな品質データを収集し、ダイナミックセル以外の測定データも集約した一元管理を可能にします。これにより、短期から長期的な傾向分析・統計解析を実現し、不良・手直しなどの予防につなげることができます。また、シリアル番号やロット番号とあわせて登録することによって、トレーサビリティ体制を確立できます。構築方法により、社内 LAN だけでなく、インターネットを介して他拠点からのアクセスも可能にします。

 

「HxGN | SFx Asset Management」 はクラウドベースのモニタリングシステムで、当社の各種測定機の状態を中心に、ブラウザやスマートフォンのアプリから遠隔で確認することができます。
また、工作機械業界を中心として標準的となっている通信プロトコル MTConnect にも対応しているため、工作機械のモニタリングシステムとの相互運用も可能です。

 

その他の機能として、「Metrology Reporting」を利用することにより、時間や場所を問わず、一連の測定結果の概要や、個別の詳細な測定結果レポートにアクセスすることができます。レポートは測定品ごとに自動的に分類され、各種検索機能も搭載しているため、完全なペーパーレス環境を実現するだけでなく、ファイル単位の管理も不要となるため、管理業務のむだの削減にもつながります。

 

転用元

本記事は、大河出版社の許諾を得たうえで、Hexagonの後藤彰宏 (Senior Manager, Division Stationary Metrology)が執筆し、ツールエンジニア誌 2022年9月臨時増刊号「省力化に貢献するダイナミックセル生産と自動測定技術」に掲載された記事内容を転用しています。
詳しくはこちらをご覧ください。

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