2025.07.29
製造業でデジタル化が進む中、CADCAMの活用は重要になっています。設計から製造までの流れをスムーズにし、製品の質を向上させることが可能という点が強みです。ただし、効果を十分に引き出すには、CADとCAMがどのようにつながり、現場にどのような利点をもたらすのかを理解しておくことが欠かせません。 本記事では、CADCAMの基本的な仕組みや、導入によるメリットと注意点について、概要を紹介します。
目次
CADCAMは、設計と製造をスムーズに統合・連携するデジタル技術です。設計変更に柔軟に対応できるほか、加工の精度も高まり、品質と生産性の両立が期待できます。ここでは、CADとCAMの違いやそれぞれの役割、現場での使われ方を解説します。
CAD(コンピュータ支援設計)は、図面の作成や設計をデジタルで行うためのツールです。2次元と3次元のどちらにも対応しており、3次元では複雑な形や曲線も見た目で確認できるため、より正確な設計が可能です。
CAM(コンピュータ支援製造)は、CADで作成した設計データをもとに、マシニングセンターなどの工作機械を動かすプログラムを作る役割を担います。製造のスピードアップや品質の安定につなげられます。
CADは設計・CAMは加工というように、両者を連携させることで、製造現場全体の効率が大きく向上します。
CADでは、製品や部品のデジタル設計データを作ります。それを受け取ったCAMは、どのような手順で工具を使って加工するかを設定するかもしくは自動的に判断させ、工作機械へ指示を出します。この流れを連動させることで、設計ミスの防止や手作業を削減でき、スピーディーかつ高精度な製品製造が可能となります。
CADCAMは、多くの製造現場で活用されており、その効果もさまざまです。以下で代表的な活用シーンを紹介します。
従来の金型づくりは、手作業が中心で、正確な形状を作るには熟練した技術が必要でした。CADとCAMを取り入れることで、設計データに基づく正確な加工ができるようになり、作業の手間や時間を大幅に減らせます。
また、作成したデータの保存や共有も容易に行うことが可能です。それができるようになると、部門間のやりとりがスムーズになります。一例としては、設計の変更点をリアルタイムで確認できるため、伝達ミスや手戻りが減り、現場の負担も軽くなります。
ほかにも過去のデータを再利用することもできるので、類似製品の開発なら、はじめから作り直す手間も省けるでしょう。
CAMでは、複雑な形の部品にも対応できる加工プログラムを短時間で作れます。加工前にツールパスシミュレーション機能を使って確認を行えば、問題点を事前に発見でき、不良品を減らせます。さらに、プログラムの自動化により、これまでベテラン作業者が担っていた作業も再現しやすくなり、教育や作業の効率化も実現できるでしょう。
加工条件をデータとして保存すれば、類似製品にも応用でき、幅広い素材への対応も可能です。
CADは、製造業だけにとどまらず、医療、建築、アパレルなどさまざまな分野で利用が進んでいます。建物や道路の設計、家具や洋服の製作にも使われ、作業の効率化と品質向上を後押ししています。最近では、3Dプリンターとの組み合わせにより、個人のものづくりにも広がっています。
設計と製造の流れをデジタル管理できるCADCAMは、作業の効率を上げるだけでなく、製品の品質向上にも役立ちます。最近では、人手不足を補うための自動化ツールとしても注目されています。ただし、操作を覚える手間や導入にかかる初期コストといった課題も忘れてはいけません。CADCAMのメリットとデメリットを解説します。
業務効率化に関するメリットは以下のとおりです。
CADCAMがあれば、複雑な形や同時5軸加工といった高度な加工もスムーズに実施可能です。特殊な形状にも柔軟に対応できるため、仕事の幅が広がり、技術の底上げにもつながります。
工程毎の確認作業やエアーカットなどの時間が少なくなるため、ムダな時間を減らせます。加工準備から加工完了までのスピードが上がることで、工作機械の動く時間も増え、全体の生産効率が向上します。
加工プログラムはすべてCADCAMで完結できるため、NCデータを作る時間が短くなります。シミュレーション機能も使えるので、工作機械を動かす前に問題点をチェックでき、現場の負担を減らせます。
品質向上に関するメリットは以下のとおりです。
CADCAMを使えば、加工の精度にムラが出にくくなります。3次元対応のシステムを活用すれば、曲面や複雑な加工にも対応しやすく、高い品質を保てます。
製品の見た目や手ざわりを左右する「面粗度」も、CADCAMの精密な制御で向上が見込めます。とくに高精度品や精密部品では、こうした品質の高さが顧客からの信頼につながります。
CADCAMは、高性能なマシニングセンタや複合加工機などとの連携にも優れています。ストロークオーバーや機械干渉、工具・ホルダ干渉を事前検出することで、作業の自動化やミスの減少にもつながります。
人材不足への対応手段として、自動化ツールの導入は以下のような利点をもたらします。
CADCAMは、マシニングセンタのような工作機械との相性が良く、IoTと組み合わせることで、製造の様子をリアルタイムで可視化できます。ロボット技術との組み合わせにより、人材不足への対応を可能にし、無人での加工体制を築くことができます。
経験が浅い人でも、CADCAMを使えば安定した加工が可能です。技術者の不足が深刻な中でも、品質の安定を保ちやすく、技能の伝承にも役立ちます。
AIとCADCAMの組合せは、加工プログラム作成の自動化に最も近いと言われています。加工条件の自動設定や最適な加工工程の算出など、人の判断に頼らず、過去のデータをもとに短時間で質の高い加工が可能になると言われています。
CADCAMの導入にあたって、よくある課題は以下のとおりです。
CADCAMは多機能である反面、操作にはある程度の知識が必要です。現場でスムーズに使うには、学習の時間やサポート体制が欠かせません。とくに初めて使う場合は、操作だけでなく、活用の仕方を理解するまでに時間がかかります。
CADCAMをきちんと使いこなすためには、学ぶ時間とお金が必要です。スムーズに効果を出すには、学びやすい環境を整えることが大切です。育成をおろそかにすると、高性能なシステムも活かしきれません。
導入にあたっては、目的をはっきりさせ、適切なシステムを選ぶことが重要です。サポート体制も整えておかないと、使い始めたあとでトラブルが起きやすくなります。段階を踏んで準備を進めれば、スムーズに現場へなじませることができます。
VISIは、金型加工に必要な機能をそなえたCADCAMソフトです。ワイヤフレーム、サーフェス、ソリッドを組み合わせたモデリング環境と、正確な多軸加工に対応した機能が特徴です。WORKNCは、データベースから加工パスを作る仕組みも持ち、2軸から5軸までの加工を正確かつ効率的に実施できます。加工のスピードと精度の両立を目指したCADCAMです。
VISI使用画面
WORKNC使用画面
EDGECAMは、優れた操作性と洗練されたパス作成により、3Dミリング、旋盤加工、そして多軸加工と複合旋盤加工機において対応可能なシステムです。
複合旋盤加工から割出3軸加工を得意とします。また、ノウハウを登録することで処理を自動化することも可能です。
ESPRITは、工作機械の動きを正しく再現する「デジタルツイン」の技術を使って、加工前に問題を予測することが可能です。そのため、ミスをふせぎつつ、生産性を高める構成が可能です。また、複雑な工作機械の能力を最大限活用することができます。
EDGECAM使用画面
ESPRIT 使用画面
RADANは、パンチ加工・レーザー加工・曲げ加工など、板金加工に必要な作業に対応するCADCAMです。6000種類を超える多彩な加工機に対応し、異なる加工機の割付を一括で保存できます。また、リトライネスティング機能を備えることで究極的な歩留率を実現します。
Radan使用画面
ALPHACAMは、木材や石材を加工するために作られた、操作がわかりやすいCADCAMです。CADデータの取り込みからツールパスの作成、加工のシミュレーションまでをひとつの流れで対応できます。5軸加工やネスティング、自動処理にも対応しており、むずかしい形状でも精度の高い加工ができるようになります。
ALPHACAM使用画面
いかがでしたか。
CADCAMは、単なる設計ツールや製造支援ソフトではなく、製造業全体の生産性と品質を底上げする重要な技術です。特に人材不足や短納期対応など、現場が抱える課題に対して有効な手段となり得ます。
導入にはコストや操作習得といったハードルもありますが、それを上回るメリットがあることを理解いただけたのではないでしょうか。
今後はAIやIoTとの連携が進み、CADCAMの可能性はさらに広がっていくと考えられます。まずは自社に合った導入目的を明確にし、段階的な活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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