コラム

2025.12.24

加工現場向けに設計された寸法測定機とその活用方法

目次

高精度な測定を保証する測定室では、一般的に無振動かつ 20℃ の定温環境が求められます。実際のところ、このような環境を整備できる条件は限られており、工程中の測定によって傾向を把握し、品質を安定させることは、品質向上のみならず全体的な効率向上にもつながります。

 

また、データを共有し活用することは全社的な利益につながり、加工現場には非常に多くの潜在的な価値が存在しています。近年は DX 化の重要性が高まっていますが、測定は現実世界を数値化する行為そのものであり、その数値を現場から全社的な価値に拡大していくことが急務です。

 

今回は、世界最大の測定機メーカーであり、品質管理・ CAM ・ CAE などの製造分野に特化した各種ソフトウェア・ソリューションを提供する Hexagon が、測定機を通じて加工現場から品質と効率を向上させるための活用方法をご紹介します。

 

工作機械上の非接触測定

工作機械上での非接触測定 「LS-R-4.8」


 

近年、非接触測定への注目が高まっています。非接触測定でしか実現できない測定も存在し、特に自由曲面形状の評価において最大の効果を発揮します。Hexagonでは、工作機械の工具マガジン内に搭載可能なレーザースキャナーを提供しており、日本国内でこの製品の研究開発から製造までを手掛けています。

 

レーザースキャナーの原理は、ラインレーザーを照射し、その反射を受光するまでの時間からレーザー線上の凹凸を算出するものです。当社製品の「 LS-R-4.8 」では、加工面にも強い波長 450nm の青色レーザーを採用し、通常焦点距離 115mm (深度 ±40mm )で 40mm 幅にて、各座標位置を示す点群を最大 36,000 点 / 秒で取得可能です。

 

また、レーザーの三次元的な空間座標位置は工作機械から取得します。切削のための高剛性が求められる工作機械の精度は、三次元測定機と比較すると劣る面もありますが、測定機メーカーならではの校正技術により高精度な補正を実現し、5軸加工機にも対応しています。さらに、本体だけでなく、測定プラン・プログラムの作成から CAD モデルとの比較、測定レポートの生成までを自社開発ソフトウェア「 HxGN NC Measure 」でサポートします。

 

例えば、 CAD モデルとの差分をカラーマップで可視化したり、数値出力したりすることができ、距離・角度・穴の寸法や位置なども取得した点群から算出可能です。また、取得した点群を STL として出力できるため、鋳物や溶接による肉盛り・積層造形などで生成した形状をスキャンし、 CAM ソフトウェアと併用することで、エアカットのムダをなくし、安全な加工パスの生成が可能となります。

 

ドイツの工具メーカー Kähler Präzisionsmechanikでの機上測定


 

その他のハードウェア面でも、工具マガジン搭載のために 10 時間の動作時間を実現するバッテリーを搭載し、ワイヤレスでのデータ通信を可能にしています。また、 IP68 保護等級を満たし、耐塵・耐水性能も確保しています。

 

一方で、測定内容によっては小径穴や深穴など、受光に制限が生じる場合や、接触式プローブの方が有利な場合もあります。接触式プローブであれば、多方向のスタープローブやアングルプローブを併用でき、効率化に寄与します。

 

さらに、ポケット底面の厚みを測る際には超音波厚み測定プローブや温度測定プローブなどの多彩なラインナップを活用できます。これらのデータはワイヤレスユニットに集約可能です。

 

工作機械の精度を担保する測定機

ドイツ Kern Microtechnik社の工作機械製造で当社測定技術を活用


 

前述の通り、測定のために工作機械の座標を補正する技術を有していますが、実際の加工工程において指令座標と実座標の乖離を最小限に抑えることは、品質向上のための最重要項目です。当社製品「 ETALON LASERTRACER-NG 」は、レーザー光により工作機の空間座標を高精度に測定し、「TRAC-CAL」ソフトウェアによって規格に基づいた測定結果の分析を可能にします。

 

必要に応じて、工作機械の再補正まで実施できます。原理としては、主軸に取付けた反射鏡にレーザー光を照射し、レーザー干渉計の原理で距離を測定するとともに、主軸の移動を追跡して空間上の複数点を取得します。それらの点と本体の位置関係から逆算し、工作機械の自由度を求めます。

 

レーザー測定による工作機械座標の評価と補正


 

測定原理は、工作機の主軸上に取付けた専用の反射鏡(リフレクタ)に向けて本体からレーザ光を照射して、レーザ干渉計の原理にてその距離を認識することに加え、主軸の移動を追跡しながら断続的に空間上の複数点を取得します。その取得した複数の点と測定機本体との相関関係から計算された座標を用いて逆算することで、工作機械の6自由度を求めるものです。

 

加工現場内で移動可能な測定機

Absolute Arm 7軸の使用例


 

加工内容によっては、単品ワークや任意の加工個所のみを測定したいなどの理由から、加工プログラム内に測定を含めることは避けたいものの、工作機械上でのワーク測定が生産性と品質を飛躍的に高める場合があります。このような場合、移動可能な測定機により測定する方法が最適で、多関節アーム型測定機が一般的です。

 

門型加工機で加工するような超大型ワーク全体の測定ではレーザートラッカーによる測定が適していますが、多関節アーム型も幅広く活用できます。この多関節アーム型測定機は、プローブ測定対応の 6 軸モデルと、レーザースキャナー(非接触)対応の 7 軸モデルがありますが、いずれも各回転軸に埋め込まれているロータリーエンコーダの角度の組み合わせにより、先端座標位置と方向を算出する原理です。ノギスで挟めない部位や、三次元的な座標を取得する場合にも利点となります。

 

Absolute Arm 6軸の使用例


 

市場には各種の多関節アーム型測定機がありますが、当社の「Absolute Arm 」(以下アーム)は加工現場において最適な特徴を数多く備えています。一例として、ロータリーエンコーダは絶対値としての角度を示すもので、他社のインクリメンタル式に発生する累積誤差が無く、アームを反復させた時の測定精度が安定するため、カタログ値に出ない性能を発揮できます。

 

また、プローブやレーザースキャナーの交換時には、再校正不要で即座に利用可能です。これは各プローブの ID を含めたチップを読み取る自動プローブ認識と、当社のマイクロメーターなどで採用しているジョイント技術を応用して、取付けの繰返し精度を担保していることが主な理由です。

 

一般的にレーザースキャナーは、光を吸収しやすい黒色やハレーション(乱反射)を引き起こす光沢物には適さないといわれていますが、当社のアームに搭載する「レーザースキャナー AS1 」は、独自技術によりこれらの弱点を克服し、ワークの黒皮や切削面の混在においても安定して高い能力を発揮できます。スキャン幅は標準焦点距離で 150mm 、最大 12 万点 / 秒でのスキャンを可能にしています。

 

さらに、最新型のアームでは IP54 保護等級に対応し、粉塵や飛まつからの影響を排除しました。また、動作保証の温度範囲を 5 ~ 45℃ としています。これらの耐環境性を備えたアームは世界初で、熱気の残る機械内部での使用や、外部からの不測な油だれや粉塵の付着においても問題とはならず、大きな安心感を得られるものになります。

 

アームの利用方法は測定だけに限らず、 CAD モデルが存在しないワークのリバースエンジニアリングや、既存の CAD モデルと実測から派生させた新たな形状を作成するなどにも発展させることができます。
このために開発したソフトウェアが「REcreate」で、一般的な CAD ファイル形式や他の測定機からの点群も取り込んで活用できます。

 

自動測定

工場内で測定機の稼働状況をモニタリング


 

量産部品の場合、全数または抜取り測定をインラインの据置型三次元測定機によって自動化することで、生産工程を止めることなく迅速な傾向把握・調整を可能にします。紙面の都合から詳細は割愛しますが、当社には工場内での稼働を前提として設計された SF シリーズをはじめとした三次元測定機に加え、画像測定機などの多くの測定機を展開しています。

 

接触式測定に加え、非接触レーザースキャナーを搭載可能な機種も豊富で、測定の自動化と FA 機器を連動させるソフトウェアや画像測定機向けの AI による欠陥検出ソフトウェアなどの自社開発製品と併せて提供できます。工作機上測定との併用も可能で、当社は製造ラインのシステムインテグレータ各社との豊富な協業実績により、生産効率を最大化しながら工程中から加工後までの品質管理を一貫して構築可能としています。

 

測定データの一元化と活用

すべての数値化された測定データを一元管理することにより、品質の可視化や改善指標・トレーサビリティの確立など、加工現場全体のみならず全社的な価値となります。

 

この目的のため、当社は「Q-DAS」という品質データ管理のプラットフォームを提供しています。現場におけるデータの収集から可視化・短期的な傾向管理を目的としたモジュールから、品質管理部門向けの統計解析、レポート自動生成やデータベース管理などのサーバーアプリケーションといったモジュールを、必要に合わせて組み合わせて運用できます。

 

また、加工現場においては工作機械の稼働状況のモニタリング・システムの導入も多いです。
当社では「 HxGN SFX | Asset Management 」という測定機を中心としたクラウドベースのシステムを開発しています。測定機の稼働状況のみならず、測定結果の管理機能も併せ持っており、検査部門や品質管理部門にとって有用なデータを簡単に入手できる環境を提供します。加工現場では、工作機械の状況に加えて検査部門の状況や検査結果を迅速に把握したい場合もあります。そのような必要を満たすため、業界標準の規格を採用し、工作機械のモニタリング・システムとの相互運用も実現しています。

 

転用元

本記事は、大河出版社の許諾を得たうえで、Hexagonの後藤彰宏 (Senior Manager, Division Stationary Metrology)ツールエンジニア 2022年7月号『加工現場向けに設計された寸法測定機と活用方法 機上測定から自動測定,ハンドツールまで』に掲載された記事内容を転用しています。 
詳しくはこちらをご覧ください。

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