2025.12.25

目次
厚生労働省「令和6年版 労働経済の分析 ―人手不足への対応―」によると、日本では少子高齢化に起因する労働生産人口の減少が進む中、経済社会活動の回復に伴い、人手不足の問題が顕在化しています。一方、経済産業省「2024年版ものづくり白書」によれば、日本の製造業が占める国内GDPは約2割にのぼり、国内経済を支える中心的な産業として重要な役割を担っています。
しかし、公益財団法人日本生産性本部の「労働生産性の国際比較」によると、日本の製造業の労働生産性はOECD加盟主要34か国中18位にとどまっており、生産性の向上が強く求められています。
これらの困難な課題に対応する手段の一つとして、製造業における自動化の推進が挙げられます。本記事では、Hexagonが有する高精度な計測技術と広範な製品ポートフォリオによって実現する、自動化ソリューションの事例をご紹介します。
切削加工における生産性向上の推進には様々な提案があるが、加工機の稼働率向上と工数削減は重要なファクターであると考えられ、これを実現するためには自動化ソリューションが有効であると考えます。しかしながら、製品の多様化が進む中、限られたリソースの中で多品種の製品製造を自動化することは、決して容易ではありません。
たとえば、積層造形(Additive Manufacturing: AM)においては、近年、日本国内でも金属材料を用いた最終製品の直接造形や基礎形状素材に対しての肉盛り溶接を用いた製品、および金型・入れ子などの製造が進んでいます。これらのAM製品は、余肉を付与した造形後に切削加工されますが、熱処理や肉盛り溶接に起因して形状が設計通りには造形できない場合があります。そして、その形状偏差の度合いによっては、設計データから作成した切削用のNCデータがそのまま利用できないことがあります。
Hexagonは、広範な製品ポートフォリオを活用し、デジタルツイン技術を通じて製造業のスマート化と品質向上を目指しているのです。前述のようにAM製品の製造に対するソリューションとしては、Hexagonの幅広いポートフォリオを使い素形材の現物データを活用して加工のためのツールパスを個別調整する方法があります。
具体的には、測定機で測定した素形材の現物形状データをもとに、設計形状に対する形状偏差をCAMに自動的に反映させるものです。測定機から加工機への搬送は、ロボットまたは搬送装置を用いることで自動化が可能であり、さらに、加工後には製品の検査を行い、そのデータを統計的工程管理(SPC)ソフトウェアで集積し、工程管理や製造プロセスの改善までを行うことができます。

「Global Speed」

「DESIGNER」

EDGECAM-画面
「NCSIMUL」は、実際に加工を行う前に仮想環境上でNCデータを実行し、干渉や加工プロセスを事前に検証・最適化するシミュレーションソフトウェアです。本ソリューションでは、NCデータと加工機データを用いた干渉チェックを担います。
「Q-DAS」は、品質管理、機能評価、パラメータベースの工程管理をサポートする戦略的SPCソフトウェアです。本ソリューションでは、最終製品の測定データを集積・管理し、工程の可視化および継続的な品質改善を支援します。

ソリューションプロセス
また、設計CADモデルに対してもフィーチャー情報を付与することで、「EDGECAM」上で加工要件を判別できるように区別されます。これにより、「EDGECAM」が各モデルを正しく識別できるようになります。この処理の後、「DESIGNER」から設計CADモデルおよび現物STLモデルが「EDGECAM」へ転送されます(③)。
「EDGECAM」には加工機の情報があらかじめセットされており、現物STLモデルに対して設計CADモデルとの差分をもとに荒取り用のツールパスが、設計CADモデル形状をもとに仕上げ用のツールパスが作成されます。モデルに付与されたフィーチャー情報を基に、どのような加工を行うかのルールを定義する「ストラテジーマネージャ」機能を用いて、デジタル化された加工ノウハウに基づく加工プランが作成され、自動的にツールパスが生成されます。
これと同時に、加工指示書も作成されます。加工指示書には、加工順に沿って、径・有効長・突き出し量などの工具情報を含む工具名称、加工種別や残し代などの加工情報、送り速度や切削速度などの加工条件、各加工に要する想定時間などが記載されており、後工程において有益な情報となります。
生成されたツールパスはNCデータへと変換されますが、これは素形材の形状偏差に対応した個別最適化された加工データとなっています(④)。加工機で実際に加工を行う前に、「EDGECAM」と連動して動作する「NCSIMUL」により、NCデータのシミュレーションが実行され、干渉の有無が確認されます。
この自動化プロセスを実現するためには、搬送系・ハードウェア・ソフトウェア間をつなぐブリッジが必要です。リアル(現実)の世界では、搬送系とハードウェアが物理的に接続され、信号によってトリガーがかかる構成となっています。
一方、リアルとデジタルを接続する「Global Speed」と「DESIGNER」間のブリッジは、データの格納を介して実現されます。
ソフトウェア間の連携については、「DESIGNER」がAPI(Application Programming Interface)を用いてEDGECAMに対してトリガーをかけ、動作を促す仕組みとなっています。「NCSIMUL」は、EDGECAMの処理完了後に動作するよう設計されています。
ソフトウェアから加工機への接続は、NCデータの転送によって行われます。「Q-DAS」は、「Global Speed」を制御するコンピューターにインストールされるか、ネットワーク接続されたコンピューター上で動作し、事前に定義されたフォルダ内のデータを収集します。
本ソリューションは、AM製品の多品種製造において、被削材を「Global Speed」へセットして以降、測定、ツールパス作成、加工、検査までの一連の工程を自動化するものです。大きな形状偏差を有する場合であっても自動化を可能としています。
これは、Hexagonの製品ポートフォリオの一部を結合することで実現されており、加工機の稼働率向上に寄与するとともに、検査で得られた測定結果を収集・蓄積することで、品質向上や工程管理、さらには製造プロセスの改善につなげることが可能となります。
また、AM製品以外に対しても、現物の全体形状を取得してモデルを生成することで、理想的なワーク配置に対する実際の配置ズレ量を把握し、それをNCデータに反映することが可能です。これにより、ワーク配置の厳密性を求める必要がなくなり、ヒューマンエラーリスクの低減や、加工機へのセット時における原点調整工数の削減が期待できます。
拡張性として、測定データの利活用が挙げられます。たとえば、測定結果を基に工具の摩耗量を推定し、次の製品を加工する際のツールパス生成へ反映させることが可能です。
また、素形材のスキャンデータを蓄積し、素形材製造工程へフィードバックすることで、前工程や受け入れ品の品質向上が期待できます。
アプリケーションの観点では、本ソリューションはAM製品を対象としていますが、今後は鋳造品や金型など、さまざまな素形材に対応したソリューションへ発展させていくことを検討しています。
自動化の推進には、半自動を含む部分的な自動化と完全自動化の二つの考え方があります。理想としては完全自動化による生産性向上が望まれますが、システムやプロセス導入のハードルは高いのが実情です。
完全自動化の導入を最終目標としつつも、部分的な自動化を段階的に導入し、知見を蓄積しながら次のステップへ進む方法は、比較的迅速に対応可能です。目まぐるしく変化する現代においては、アジャイルなアプローチにも適応できる点で、有効な手法であると考えられます。
さらに、製造にフォーカスした部分最適にとどまらず、そこで得られた知見やデータを集約・活用することで全体最適へと昇華させていくことが、広い意味でエンジニアリングに求められている役割であると考えます。
本記事は、大河出版社の許諾を得たうえで、Hexagonの上野 京介 (Senior Application Engineer)が執筆し、ツールエンジニア 2025年6月号『現物データを活用したHexagon製品群による自動加工ソリューション』に掲載された記事内容を転用しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
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© Hexagon Manufacturing Intelligence Japan
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