2025.09.05
製造現場で高精度な品質管理を実現するには、「正確で再現性の高いデータ」が不可欠です。しかし属人的な作業や感覚的な判断に依存する場合、ばらつきや不具合の発生を完全には抑制できません。
そこで注目されるのが、測定データを一元管理・解析できる品質データマネジメントシステムQ-DASです。Hexagonの三次元測定機との連携にも優れ、品質管理の新たな標準として導入が進んでいます。
本記事ではQ-DASの導入によって得られる価値について解説します。
目次
製造業のメーカーにおける課題の一つに、高品位なデータの取得が挙げられます。質の悪いデータしか得られないと、結果として廃棄や再加工が増えて、損失が出てしまいます。
測定による誤差が生じる要因は様々です。例えば温度が適正でないことや振動が発生するといった測定環境の問題や人為的な誤差も挙げられます。元来、日本の製造業は職人の意識の高さによって技術力が向上し、属人的であることが強みでした。しかし、ノウハウの伝承が難しくなったほか、評価基準が複雑化する中では、人の力に頼るのは限界があると考えております。品質マネジメントシステムなどによる厳しい評価基準をクリアしなければならない現状を鑑みると、従来の手法では対応が困難となりつつあります。
その対応を行う為には、まず信頼性の高い測定機によって得られたデータであることが大前提となります。次に、環境や人に左右されない状況で得られたデータであること。しっかり検査された測定機を使って、誰が測定しても再現性の高いデータが、信頼性の高いデータといえます。
もう一つの大きな課題が、製品の品質管理です。日本において、製品のデータをエクセルによって管理しているケースが散見されます。しかし、欧米だけでなく東南アジアにおいては、品質管理のソフトウェアを導入して品質データの管理を行うことが主流です。
何故なら、エクセル管理ではデータの統合や連携が困難なため、信頼性そのものの担保が困難であるため、信頼性を疑義が生じた際にその正当性の証明が難しい状況です。また日本の製造業は独自の発展を遂げた故に、品質管理においてガラパゴス化している状況が散見されます。
これらの課題を解決できるツールが、Hexagonが提供している統計的工程管理ソフトウェアのQ-DASです。Q-DASは100社以上のパートナーを有しており、認証を受けたメーカーの測定機やソフトウェアから得られたデータを共通のファイル形式で収集することで一元的な管理を可能にします。また、Q-DASデータのフォーマットは、ISO 11462-5に準拠しており、高い信頼性と公共性を維持しています。
データの一元管理を実施する事により、製品品質の向上に寄与します。例えば、全体の測定結果の「見える化」や、統計的に分析することによって、工程における現状に対する「気づき」が得られます。こうした「見える化」や「気づき」は、関係者間で共有が可能です。それにより製造工程全体による品質管理と、工継続的改善が可能になります。
一元管理ができることに加え、自動車産業における品質データマネジメントシステムの国際規格である、IATF16949に適応した統計的品質管理が可能なことも、Q-DASの大きな特徴です。IATF16949は品質データマネジメントシステムのISO9001の要求事項をベースに、自動車産業特有の要求事項を加えた規格となっています。
Q-DASは、IATF16949を形作るコアツールと呼ばれる管理事項の中の測定システム解析であるMSAと、統計的工程管理のSPCに対応しています。MSAは、測定システムの信頼性を評価し、品質管理プロセスを担保する重要な手法であり、測定システムの変動を最小限に抑えることで、製品の品質やプロセスの効率性を向上させることができます。また、SPCは製造プロセスの管理・改善するために、統計手法を用いてプロセスを管理・制御する手法です。これらコアツールへの対応は、IATFに基づいて管理運用するグローバル企業の高い品質要求に応えていくためには必須となっています。
Q-DASは、グローバル市場で広く普及しており、欧州自動車業界におけるデファクトスタンダードのソフトウェアとして採用されています。端的に言えば、「工程の業務効率を向上させ、満足度を高める」ためのツールと位置づけられます。
Q-DASの能力を最大限に引き出す方法として、Hexagonが提供する三次元測定機との連携が挙げられます。三次元測定機は、縦・横・高さの三次元座標を取得することで、対象物の寸法、位置関係、形状などを高精度に測定できる装置であり、Hexagonはこの分野で世界トップのシェアを誇ります。
Q-DASは、さまざまな企業の測定機からデータを取り込むことが可能で、コンバータや測定機付属のソフトウェア機能を介して対応しますが、Hexagonの三次元測定機との連携が特に優れた相性を発揮します。この組み合わせにより、他では得られない独自の価値を生み出すことが可能となります。
独自の価値の一つは、三次元測定機のデータをQ-DASで直接取り込むこと。もう一つが、リアルタイムでデータや稼働状況を確認できることです。それらの価値が生み出す価値は数多くありますが、その価値の1つに問題発生時の初動が早くなることが期待できます。リアルタイムでデータを分析し、傾向を管理することで、品質トラブルを素早く察知し、原因の特定に向けた対応ができます。その結果、例えば不良品が出ることを防ぐことにつながるなど、初動の早さがものづくりにおける生産性の向上に寄与します。
また、Hexagonの三次元測定機で得た精度の高いデータを、Q-DASで分析することで、一見しただけではわからない製品ごとのデータのばらつきを瞬時に把握できます。監査の際に何か指摘された場合にも、Q-DASであれば容易に解決策を導き出してくれます。Q-DASを導入している企業からは「学者を一人雇っているようだ」との評価も寄せられています。測定機とソフトウェアのメーカーが同じであることで、何らかの疑問が出てきた時には、Hexagon一社に問い合わせれば済むことも組み合わせることのメリットです。
日本国内においては、測定データの一元管理や統計的品質管理が十分に実現されているケースは、依然として限定的であると推察されます。同一企業内であっても「他拠点の製造実態が把握できていない」といった課題を抱える企業が一定数存在しており、データを管理している場合でも、そのデータを品質向上に活用するまでには至っていないケースが多く見受けられます。
しかし、Hexagonの三次元測定機とQ-DASを連携させることで、測定データを一元管理し、ネットワークを介してリアルタイムで品質を管理することが可能になります。この仕組みを導入することで、さまざまなデータを活用し、生産や製造を管理する体制そのものが変革され、意思決定のスピードが導入前よりも大幅に向上することが期待されます。
更に、データの活用は、単にトラブルを未然に防ぐだけでなく、自社の新たな強みを発見するきっかけにもなります。これまで気付かなかった観点から自社の製品やプロセスを見直すことが可能となり、品質向上や競争力強化に資する重要な手段となり得ます。データを積極的に活用することで、企業の成長と変革を促進する新たな可能性が広がるのです。
品質管理への要求は年々高まっており、測定担当者が測定に費やせる時間は短縮される一方で、その要求は今後さらに厳しくなると予想されます。また、バーチャルとリアルの融合が進むことで、要求はますます厳格化しています。近年では、測定結果のばらつきを数値化する「不確かさ」の概念を取り入れた新たな規格も登場し、品質管理の基準は着実に進化を続けています。
バーチャル技術によって精度の高いシミュレーションが可能になれば、製造前の段階で不具合の検討や発見が期待できます。この技術革新は製造現場のさらなる自動化を促進し、デジタルデータの活用によって人の技術に依存せず、シミュレーションから製造までを断絶なく一貫して実施する体制の構築が求められるでしょう。これが、今後の品質データマネジメントにおける重要な方向性であると考えます。
ただし、バーチャルの精度を向上させるためには、元となるリアルデータの信頼性が極めて重要です。具体的には、三次元測定機を活用して高精度なデータを取得し、そのデータを多角的に検討・検証して品質管理に生かすことが鍵となります。世界中で使用されているHexagonの三次元測定機と、欧州自動車業界でデファクトスタンダードとなっているQ-DASを組み合わせることで、これらの課題に対応する最適なソリューションを提供できると私たちは確信しています。
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